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エクアドル日記(2005年8月)
8月12日(金) 曇り(ケベド)
リンゴ飴売りのニーちゃん
ケベドのカテドラルをバックに、怪しい男女二人組
問題のラドロン橋(泥棒橋)
橋に行ってはいけないと猛烈な勢いで
俺に注意したオバちゃん軍団
テルミナルの近く、素晴らしい体格のオバちゃん3人組
今日は休日である。本来なら10日の水曜日が”エクアドル独立記念日”であり祝日なのだが、通常この国では休みが土日にくっつくように、祝日が火曜〜木曜の場合、金曜か月曜をかわりに休日にする。よって10日の水曜は通常通り仕事があって、今日金曜から3連休である。俺にとってはめったにない3連休なので、昨日の晩仕事が終わったあとグアヤキルに移動し、今日からの3連休でコスタの街をいくつか回ることにしたのだ。というのは第2の目的で、実際には「クエンカ麻雀部会コスタ遠征」というのがこの旅の本当の目的である。
朝、グアヤキルからバスでコスタを北上し、ケベドのテルミナルに着く。午前11時半。テルミナルの向かいの食堂では、テーブルを囲んでトランプをしてた、ここエクアドルでよく見かける、朝から遊びやがって普段仕事してんのかお前ら的オヤジ軍団から早速声をかけられる。まぁ、今日は休日だからだろう。
「お前、チーノ(中国人)か?」
「いや、俺は日本人だ。」
「そうか、日本か。」
「セントロにはタクシーでいくらだい?」
「1ドルだ。」
この陽気系オヤジ軍団にカメラを向けると、奴等は一斉に満面の笑みを顔中にたたえてレンズを見つめる。
(さすがはコスタの街だ、シエラとは人のノリが違うな。)
と内心思いながらその場を立ち去って道の反対側のタクシー乗り場へ。オヤジ軍団は、知り合いだろう、タクシーの運ちゃんに声をかけている。
「そのハポネス(日本人)はセントロへ行くんだとよ!」
そしてセントロにタクシーで移動。車の中で運ちゃんは興味深々に俺に尋ねる。
「中国語は難しいんだろ。」
「(「またかよ」と顔に「もうどうしようもない」というような苦笑いを浮べながら)だから俺は日本人だって。」
「日本人は何語をしゃべるんだ?」
「日本語だよ。」
「中国語じゃないのか?」
「全然違うよ。俺たちは中国語をしゃべれないし、中国人は日本語をしゃべれない。だから言葉は通じないのさ。」
「(とても、心底から驚いたように)へぇえええ。そうなのか。知らなかったよ。」
まぁ、いつもの会話の展開である。ほとんどのエクアドル人は中国と日本が一緒で、同じ言葉を話すと信じている。
さて、10分もかからずに車はケベドのセントロの目抜き通りに着いた。休みだけあってかなりの人出だ。いつものようにビデオカメラを右手に歩き始める。このケベドという街は、人口10万、エクアドルでも有数の治安の悪い街だと聞いているが、俺にはそんなことは参考情報にしかならない。「いつでもどこでも撮る」、これが俺のポリシーであって、今までどこの国に行ってもこれを貫いてきた。今まで幸いにも銃やナイフで脅されたり、大人数で囲まれて強盗されたことは一度もない。世の中そんなに悪い奴らばかりじゃないからか、俺が怖いからか(笑)、単に運が良かっただけなのか。
そうやって少しは警戒しながらケベドのセントロを歩き始めたのだが、すぐにこの街が他の街と違って実に面白いことが分かる。何が違うのか。
街をビデオカメラで撮影しながら歩いていると、次々と人々が声をかけてくるのである。それも、こんな風に。
「おい、こっちも撮ってくれ。」
「こっち撮って!でも鏡見てこなきゃ!」
「まあいいからこっちへ来い来い。」
そう、彼らは、ビデオや写真に撮られたがっているのだ。エクアドルでこんなにカメラやビデオに警戒しない、それどころかそれらを歓迎する街に来たのは初めてである。
次から次へと間髪入れずに声をかけられる。その度に写真を撮る。休んでる暇もない。
しばらくそんな調子で写真を撮り続け、疲れたので人混みを避けてカテドラル前の公園で休憩する。すると今度は怪しい男女二人組が声をかけてきた。
「こんにちは。あなたはどこから来たんですか?」
「俺は日本人だけど今はクエンカに住んでる。」
女の方が俺に熱い視線を投げかけてきた。
「今晩は暇ですか?よかったら一緒にパーティに行きませんか?」
「(何となく甘い匂いの誘い文句に一瞬ふらりとしながら)は?(だがすぐに気を取り直し)いや、今日は午後にもうマンタに行くから、無理だね。」
「そうですか・・・。」
そうして奴等はカテドラルをバックに写真を撮ってくれ、っていうから、一枚撮ってやる。男が女の肩に手を回す。どうやら恋人同士のようだ。写真を撮って見せた後、彼らは礼を言って去って行った。
(なんじゃ、あいつら?新手の売春詐欺かな?)
だけど女の子の方はなかなかかわいかったので、ちょっと残念な気もした(笑)。だが、ここにはどんな落とし穴が待ち構えてるか分からない。用心、警戒。
セントロのはずれに橋が見える。それは、「泥棒橋」と呼ばれる、ケベドでは評判の恐怖の橋である。その橋を渡ったが最後、橋上で橋を取り仕切る泥棒一味に身包み剥がされる、と言うのである。確かにこの橋は幅3メートルほどの歩行者専用橋で、長さは百メートルくらいあり、橋の途中には逃げ場はない。ある隊員の話だと、橋上で強盗に囲まれた若者は、河に飛び込んで逃げる奴もいるそうである。
さて、その橋にビデオカメラ片手にのほほんと近づいていくと、道端のテーブルでトランプをしていたオバちゃん軍団が血相を変えて俺に注意してきた。
「あんた、どこ行くの?」
「いや、あっちへ(橋の方を指差す)。」
「あんた、何を考えてるの、ダメよ、行っちゃダメ。この先は危ないのよ!」
「へ?そんなに危ないんですか?」
「行くならその辺りまでよ。カメラはカバンにしまいなさい。」
オバちゃん軍団だけでなく、その隣で酒を飲んでいた若者連中も口を揃えて「ダメだ、ダメだ」を連発する。やむなく俺はビデオカメラをカバンにしまい、彼らの声を振り切ってそろそろと橋に近づいていった。
橋を見ると、若い女の子二人組も平気で渡っている。
(何だ、やっぱり大丈夫なんじゃな〜いの?)
と緩み、こらえきれなくなってカメラを出して橋の周りの写真を撮る。すると、その様子を見ていた、橋の下でたむろしているオヤジ軍団に遠くから声をかけられた。距離的には50mくらい離れている。オーバージェスチャーを駆使し、どうやらこっちへ来いと言っているようだ。その雰囲気は、遠めに見てもオジさまたちちょっとラリッちゃってませんか的ヤバそうな酔っ払い軍団である。俺は聞えないフリをしてそろそろとその場をUターンして離れた。ここにケベドの治安の悪さの一端を見た気がする。いやひょっとしたら実際には気のいいオジちゃんたちだったのかもしれない。だけど近くの住人の警戒心はのっぴきならないものがあったので、本当に危ないんだろう。
ケベドの街のもう一つの特徴は、中国人経営の店が多いということである。中華レストランはもとより、スーパーや金物屋もそうである。
通常、中国人が多い街には、中国人に対する偏見が存在する。たいてい中国人は各街で商売をしているのだが、それによりエクアドル人の商売を侵害している、というのである。これは的外れな批判であって、曲がりなりにも民主主義・市場経済国であるなら、商売のやり方で勝負すればいいのであって、「奴等のおかげで商売上がったりだ」というのは自分のやり方がまずいだけである。中国人はただいつものように競争原理と独特の流通ルートで安い物を売っているだけである。
だがここケベドでは、俺が街で歓待されたことを見ても分かるように、中国人に対する偏見は少ないようである。あまりに多いのでもう仲間として慣れたのか。あるケベド隊員は、「中国人経営の店が非常に多いので、そこで働くエクアドル人も多く、つまり職を供給してくれる、食わしてくれるのが中国人、的な構造があって偏見よりもむしろ感謝している面があるのではないか」と分析していた。そういえば、セントロまで来る時に乗ったタクシーの運ちゃんも「ケベドには中国人が多い」と言っていたが、彼の口調には「中国人は敵ではなく仲間」という雰囲気が感じられたし、テルミナルのダメオヤジ軍団に「チーノ!」と声をかけられたときも、彼らは満面に笑みを浮べていて、差別的な匂いは感じられなかった。これらはあくまでも俺の主観だけれども。
そうしてこうしてそろそろ次の目的地・マンタに移動する時間が近づいてきた。セントロからテルミナルに戻る。テルミナル近くの食堂でタバコを買うと、そこにはセントロで俺を見たと言う釣鐘型体型の肥えたオバちゃんが待ち構えていた。さらには、全く同じ体型のオバちゃんがもう2人いて、それは壮観な眺めである。3人合わせて体重300キロ、小錦も真っ青だなと目が視覚体重推定器と化す。
「(ニコニコしながら)あなた、セントロで写真撮りまくってたわね。」
「あっ、見てたんですか?」
「ちょっと座りなさい。コーラでも飲む?」
「いや、遠慮しときます。もうバスで発たなくちゃならないんで。」
「(今にも俺の腕を掴んで拘束しそうな勢いで)そんなこと言わずに座りなさい。ちょっとおしゃべりしましょうよ。」
「(ジリジリと後ずさりして彼女との距離を保ちながら)いや、ホントに時間ないんで。」
俺は逃げるようにその場を去る。道の反対側に渡っても、まだオバちゃん達は俺に向って声を張り上げている。彼女達は純粋に、時間つぶしでもしようと思って俺みたいな珍しい旅行者と話をしようと考えているだけなのである(と俺には感じられた)。何か分捕ってやろうとかボッタクってやろうというコトではないのだ。
(やれやれ、このケベドって街は一体・・・。)
とにかく面白い街だった。わずか5時間ほどの滞在だったが、この街では人の下心のない無邪気さに存分に触れられた。
午後4時のバスに乗って太平洋岸の街、マンタへ向う。夜9時、5時間かけてバスはマンタに到着。夜の闇に沈んで見えないが、すぐそこに太平洋の潮が広がっているはずである。リゾート観光地で連休だけあって宿がなかなか見つからなかったが、ようやく5件目で空室を見つけチェックインする。一泊10ドルは高いが仕方ない。
明日はエクアドルに来て以来初めて海を見ることになる。
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