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アメリカ人(黒人)の苦悩

2001年8月

先日飲み屋で飲んでいたところ、隣のテーブルに、外人のグループがやって来た。我々のグループは、全員が英会話スクールに通っていたので、実地訓練とばかりに、その外人グループに果敢に話し掛けていった。
黒人のT氏は、ガタイが良く、スキンヘッドで一見おっかなそうだが、話してみるとなかなか面白い話をしてくれた。それは、私が感じていたことと近かったので、有意義であった。彼の話の内容を踏まえ、私が考えていることを述べてみたい。

アメリカには、現在でも厳然と人種差別が存在する。それは、表面上はそれほど見えないが、人々の心の中には依然として存在するのである。
例えば、黒人が、政治・経済の中枢で活躍することは、非常に難しい。
白人の女の子は、黒人やアジア人の男には見向きもしない。これは、単なる好みの問題なのかもしれないが、T氏の話では、これも白人の人種意識の現われなのだという。
私は、アメリカに1年間滞在していたことがあるが、黒人の人達が多く住んでいる地区は、概して生活環境が悪そうなところであった。

アメリカは、ヨーロッパから移住してきた人が建国した国であるから、基本的にヨーロッパ人の論理が社会の根底にある国である。ヨーロッパ人の論理とは、「自分達が他の人種(具体的にいえば黒人・アジア人等の白人以外の人間)よりも優越している」ということである。建前上現在は表面上に出てこないが、以前はそれが露骨にまかり通っていた。(植民地帝国主義、ナチズム、KKKなどは、その最たるものである)

ヨーロッパ人は、16世紀以降、アフリカ、南米、アジアの国々を蹂躪し、植民地としていた。その論理は、「優越者であるヨーロッパ人が彼ら(先住民)を支配するのが当然」というもので、当時のスコラ学では、「他国の植民地化をいかに正当化するか」ということをばかばかしく論理付けしている。
基本的には、このヨーロッパの世界征服の論理が、現在も国際社会で幅を利かしている。

(余談1)
最近、小泉首相の靖国神社参拝問題だとか、新しい教科書をつくる会の歴史教科書の戦争記述だとか、戦争に対する認識に対し、日本が植民地としていた韓国・中国を含めて大論争が巻き起こっているが、ヨーロッパは、あれほどの極悪非道をしながら、植民地としてきた国々に、どれほどの謝罪をしたのだろうか。
奴隷貿易で多大な被害を被ったアフリカの国々が、最近、欧米諸国に対して「補償」と「謝罪」を求める動きがようやく出てきている。アフリカ諸国は、今まで欧米諸国から経済的援助を受けてきたため、なかなかこれを求めるのは難しかったようだが、「奴隷制度」は人類の歴史の中でも最も重大な非人道的行為の一つである。これに対して謝罪を求めずに何に謝罪を求めるのか、くらいの犯罪だ。
ちなみに、ドイツはナチスの犯罪に対し、補償金を遺族に支払ったそうである。

(余談2)
だいたい、アメリカがイギリスから独立した際の、有名な「アメリカ独立宣言」にしたって、イギリスの植民地となっていたアメリカの、ヨーロッパからの移民達によって起草されたもので、「人間は生まれながらに平等であり人権を有している」と高らかに謳いながら、実際独立した後も奴隷制度は継続されたし、アメリカ中西部の開拓とともに、先住民を西へ西へと追いやり、彼らの人権は全く無視したのである。完全な矛盾。つまり、「アメリカの独立」というのは、「アメリカに住む白人の独立」だったわけである。

さて、T氏は、こんな事を言っていた。
もし、白人、黒人、アジア人、ヒスパニック、様々な人種の子供たちを同じ部屋で過ごさせたらどうなるか。彼らは、すぐに友達となり、人種など関係なしに遊び始めるであろう。(理性的生物としての)人間の平等性は明らかで、いかにヨーロッパ人の論理が誤りであるかが分かる。
アメリカでも、子供の頃には、親がよほどの人種差別主義者でなければ、きっと差別など感じずにすむ。しかし、子供が大人になるにつれ、アメリカ社会のシステム自体が、いつの間にか社会の根底に流れる差別意識を認識させるのだという。もし黒人に生まれたならば、子供の頃には気づかなくとも、歳を取るにつれその差別感を徐々に感じていき、自分の力ではどうしようもない限界を悟らされることになる、という。

このことは、基本的に単一民族の日本人には、到底理解することが困難なことである。しかし、「ヨーロッパ人の傲慢」は認識しておくべきことだ。

(2001.8.)


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