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死(3)
2003年6月

最近TBSで深夜、ドラマの再放送をやっており、これが面白くて毎回見ている。題名は「夢のカリフォルニア」。堂本剛、国仲涼子、柴咲コウ出演の青春ドラマである。ここ数年テレビドラマを見ていない私が、引き込まれてしまった。
ストーリーは、それぞれがさえない日常生活を送る中で様々な問題を抱え、解決の糸口すら見つけられないまま切羽詰ってどうしようもなくなった主人公達が、今の生活から現実逃避するため、旅に出て全く新しい生活を始める、というもの。ドラマの題名からは想像もつかない暗いエピソードの数々は、今の世相を反映しており、現実味があって素直に納得できた。このような暗いトーンのドラマは、昔の俗に言う「トレンディドラマ」とは対照的である。バブルの頃は、ペーペーの若いサラリーマンが、どういうわけかみんな高級マンションに住んでいて、男も女もいわゆるヤング・エグゼクティブ気取りの生活を送り、薄っぺらな悩みしか持っていないような青春群像が描かれていた。まさにバブルの時代を反映していたと言えよう。

さて、「夢のカリフォルニア」に話を戻すと、国仲涼子演じる女の子が、「もう何もかも(特に自分自身のことが)いやになって」、自殺を図る。(余談だが、国仲涼子といえば私は「ちゅらさん」での明るいキャラクターしか見たことがなかったので、演じられる暗い人物像が実に新鮮だった。また、堂本剛の、いつも寝癖のような、ライオンのたてがみのような髪型をして、無口でいてしかし時には熱いキャラクターがいい味を出していた。)
このことがきっかけで3人は現実逃避の旅に出る決意をするのであるが、これを見て、最近インターネット上で「心中仲間」を探して本当にみんなで死んでしまう事件が続発していることを思い出した。

多くの人がこのドラマのように切羽詰って途方にくれて、もうどうしようもないところまで来ているんだなぁ、と感じる。何とかして今の苦境から脱出したいと考えてる人が多いんだろう。現実逃避する手段として、このドラマの主人公達のように今の生活をすべて捨てて(携帯まで捨てて)旅に出て別の場所で新しい生活を始める、という方法もあるだろう。ところが、最近簡単に「死」を選ぶ人が多くなってきている。

死んで逃げたいほどの苦境なのだろうか?彼らの苦悩は彼らにしか分からないので、私がとやかく言うことではない。しかし「どうして?死にたくなるほどの?」といつも思う。不況の折、リストラで職がなくなった?生きている意味が分からない?

「苦境に立ったことのない人間にとやかく言われたかない」と言われてしまうかもしれない。確かにそう言われると反論はできない。だが、それでもあえて言いたいのは、「幸せ」なんて人それぞれ自分の中でその基準をいかようにも持てるわけで、つまりある人が不幸だと思っていることが、別の人には全くのノープロブレムだったりするのである。要は、もっと巨大な苦悩を背負ってもなお前向きに生きている人はたくさんいるわけで、そういう人や世界を知れば、自分のちっぽけな苦悩ごときで自殺しようなんてきっと思わない、と私は思う。

欲望に任せて、上を見たらきりはない。「生きていられるだけで幸せ」とか「1日2食食べて、雨風しのげるところがあれば幸せ」くらいに「幸せ基準」を下げられれば、人生ずっとハッピーだ。

「安っぽい幸福」と「高められた苦悩」と、どちらがいいか?(ドストエフスキー『地下室の手記』より)
-- 安っぽい幸福。

P.S.
それにしても、何で最近「知らない人とみんなで心中」なんだろう?自殺と言えば一人で死ぬのが普通なのに。簡単に、苦しまずに死ねる方法を知っている人がいるから?独りだと寂しいから?死ぬ時くらい誰かと一緒がいい?
練炭で心中したあるグループは、渋谷のカラオケボックスで心中の事前打ち合わせをしていた、という。どうせなら死ぬのをちょっと延期して、そいつらでカラオケサークルでも作って、歌い倒して日頃のストレスを晴らせばいいのに。ってそんな単純じゃないか。

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