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塾講師

2004年1月

大学・大学院時代の計3年間、神奈川県川崎市内で塾講師のバイトをやっていた。小学生、中学生、高校生のクラスを持っていたが、子供達は各年代ごとにそれぞれ特徴があって面白かった。ここで、私が感じた、各年代の子供達の特徴を述べてみよう。

(1)小学生高学年
教室で一度おしゃべりが始まると、瞬く間に広がってなかなか収まらない。そこで一喝。「おメェら、静かにしろ!」
すると、教室は水を打ったように突然静かになる。
この年代の子供達は、まだ「大人とか先生は、怖いもの」だと思っているので、こっちが怒ったフリでもすれば、イチコロに言うことを聞くようになる。
それと、この年代だと、俺くらいの大学生と普通の大人の区別がなかなかつかない。つまり、「先生=大人」と思っててくれるので、次に述べる中学生のような苦労をしなくてすむ。
どこの国でもこの年代の子供は純粋だ。汚れきった大人に、忘れていた何かを思い出させてくれる。

(2)中学生
中学2年のクラス、初日の授業。15人くらいのクラスは、女の子のほうが多い。大学4年の俺は、教室に入るとすかさずキンパチ先生(または熱中先生)ばりに黒板に自分の名前を大きく書いた。(前からコレ、やってみたかったんだよね)
「吉−田−伸−也」
女の子の一人が手をあげる。おっと、いきなり何の質問だろう?
「先生、先生は彼女いるの?」
全く・・・。いきなり質問かと思えば、そんなことかよ・・・。

ある日、授業で数学の証明問題をやっていた。俺が回答を黒板でしてる間中、女の子のあるグループのおしゃべりが止まらない。俺はそれに気づきつつも無視して回答を続けていた。そして、
「分かったなー。よし、次の問題ー。」
と言って黒板を消した。すると、おしゃべりをしていた女の子のうちの一人が言ってきた。
「先生、今の問題分からなかったからもう一度説明して。」
俺は吠えた。
「おめぇらがおしゃべりして聞いてなかったから分からねぇんだろ!二度と説明はしねぇ!」

3日後、またバイトで塾に行くと塾長に呼び出された。
「吉田君、こないだの授業で生徒の質問に答えなかったんだって?生徒の親から電話がかかってきてさ。」
「いや塾長、それは生徒がおしゃべりしてて聞いてなかったのが悪いんですよ。」
「吉田君それはよく分かるんだけどさ、次回からはそうであっても質問には答えてくれないかな。もちろん吉田君が正しいのは分かってるよ。だけど親がうるさいんだよね・・・。」
「・・・ハイ。分かりました。」
子供は純粋であるとともに、(純粋であるがゆえに)ズルイ動物である。自分が悪かったことは完全に棚に上げて、「先生が私の質問に答えなかった、ヒドい先生だ」とだけ親に告げるわけである。その親が、自分の娘が悪いとは露とも知らずに血相を変えて塾に抗議の電話をかけてくる。
「お宅の塾講師はケシからん!生徒の質問に答えないなんて!」
って。自分の子供の頃を思い出してみて、少しは「自分の娘に非はないか?」って考えろよな。

また、中学生の特性として、ちょうど世の中のことがだんだん分かり始める年頃であるため、背伸びしたがる傾向がある。例えばH関係の話。これは女の子に顕著だ。よく授業後に、もう夜9時だというのに塾の外で俺の教え子の子供達が7,8人で待ってて(女の子が多い)、俺と話をしたがった。
「先生、×××って知ってる?」
「先生、×××やったことある?」
×××の部分はいわゆる下ネタ言葉である。彼女達は、大学生の俺と対等に話すことが、そういうことについて話すことだと思い込んでいるわけだ。
これに対し、中学生の男どもは単純だ。奴らが俺に話すことと言えば、
「先生、今週号のジャンプ読んだ?ジョジョ(の奇妙な冒険)、面白いよね。」
てなものである。俺も中学時代はこうだったなぁ、と思い出す。一般的に、女の子の方が早熟である。

各世代の中で、中学生の女の子が一番扱いにくい。奴らは授業で俺が怒ると、反省するんではなくてフテ腐れる。
「何様のつもりよ、あの先生?ムカつくわね。」
ってな感じで。それでいて俺みたいな大学生の男には興味津々で色々話をしたがる。

奴ら中学生は、俺が学生アルバイトだと分かっている。つまり、塾長やその他常勤のプロのオジサン講師達とは違う、と完璧に認識しているのだ。これが、奴ら中学生が俺達学生アルバイトの講師達をナメてかかってくる一つの要因となってくる。というか、歳が近いためにどうしても「気軽に話せる兄貴分」的に見られがちだ。これをうまく克服し、奴らを学業に集中させるのが講師としての腕の見せ所でもある。

(3)高校生
高校生。大人だ。小学生、中学生に比べると、何と大人なことか。彼らは、「大学生の俺と対等に話すこと」=「Hな話をすること」などとは思っていない。逆に、そんな話をするのはかえってガキっぽく俺に思われると分かっている。だから俺にこれ見よがしにそんな話をしてくることはない。
(もっとも、俺が教えていた高校生は、比較的マジメで優秀だったので、塾に何をしに来てるかという事をちゃんと認識していて、学習意欲があったので手がかからなかった、ということもある。つまり、俺が教えていた高校生が世間全体の高校生の特質をそのまま象徴しているわけではない。これに対し、中学生くらいだと、「誰も彼もみんな塾に行くので私も塾に行く」的な部分があるので、ほぼ中学校と同じメンバーが集まってきている。それゆえ、必ずしも全員がまじめに勉強しに来ているわけではない。)


それにしても教師というのは実に責任重大でやりがいのある職業だ。教師次第で、子供達の将来が変わり、彼らの人生が決定してしまうのである。例えば、中学時代にメチャメチャ面白い授業をする理科の先生がいたとして、その教師に影響されてその教え子の何人かが理数系の道(エンジニアや学者等)に進むことになるわけだ。
そして、そんな彼らが知らず知らずのうちに日本の未来を決めていく。

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