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エクアドル日記(2004年11月)
11月11日(木) 晴れ

火事

5時に学校を上がりバスで家に帰る。バスを降りると、大通りに面した車の古工場のような場所からオレンジ色の龍のような火の手が上がっていた。焚き火にしてはあまりに火の勢いがすごいので、すぐに火事だと分かった。火元は古いフォードの小型のタンクローリートラックである。その後部の楕円筒形をした貨物充填部から積極的に上がっている。そして火は見る見るうちに巨大化し、常に形を変えるオレンジ色の先端からモクモクと黒い煙を吐き出し、生き物のようにのたうちながら空を焼き始めた。6,7mほど上空を走る電線に到達すると、獰猛な勢いで電線のうちの1本を噛みちぎるように焼き切った。そして高圧電線と思われる直径2cmほどのその切れた電線は、2つの切断口から凶悪そうな火花を散らしながら地面に落ちてきて断末魔の蛇のように暴れまわっている。

一瞬にしてそんな修羅場が展開始めたが、消防隊はすぐに駆けつけた。そして消防車が入ったこの大通りが直ちに通行止めとなり、これまた瞬く間に大勢の野次馬が集まった。ほとんどの人間は、これから始まるショーを見たさに肥大化がほぼ収まった - それでも火の手はまだ4mくらいの高さがある - 火を見ながら通行の足を止めている。だが中には、「俺は急いでンのさ」とばかりに火を一瞥しただけで通り過ぎていく人もいる。そうこうしているうちに警官隊も駆けつけ、車と野次馬の整理に奔走する。ここまでやってきて不運にも突然の通行止めに遭遇した路線バスは、警官の指示の元しばらく呆然と停車していたが、すぐにはこの通行止めが復旧しそうにないことを悟ると、別の道を探しにUターンしていった。路線バスが普通の道をUターンするなんて始めて見たよ。急いでる乗客にしたら、このまま消火作業が終わるまで足止め食らって待ってるなんてたまったもんじゃないだろうからね。
ただこっちでは、道路工事なんて日常茶飯事だから、しょっちゅう路線バスのルートが変更される。昨日まで走ってた道を今日は通らなかったりするのだ。だからこんなことも普通の出来事として乗客は受け止めたのかもしれない。

そしてついに真打登場、3人の消防士が一列縦隊となり、ホースを右腰に抱えて射出準備OK。せーの、で発射!
水(消化液)は徐々に凶暴に荒れ狂う生き物のような火を抑えつけていく。何だ、意気地のない火だな、と思っているうちにあれよあれよと言う間に火は鎮火した。放水を始めて10分もかからなかった。その後も念入りに確実に火を絶やすためにしばらく消防士達はトラックに放水していたが、やがてそれも終わり、後部が黒く無残に焼け焦げたトラックはにわか雨の後のようにびしょ濡れに光り、上がっていた煙もほとんど途絶えた。辺りは緊迫の後の緩んだ空気に包まれ、野次馬は1人、2人と現場を去っていく。

交通規制も解け、俺は火の手を上げていたトラックに近寄ってマジマジとその焼け具合を見つめた。そして、歩道に落ちている高圧電線の切り口を見つめた。
「これってアブネェぞ、どうすんだろ?」
消防隊がこの内部むき出しとなった電線に気をかけている様子は全くない。消防士の一人にこの電線の処理は誰がするのかと聞いたら、彼の答えは、電気会社の人間が来て処理する、とのことだった。
現場の横で消防士のリーダーと思われるオジさんが、TV局の女レポーターのインタビューを受けていた。こっちのメディアの迅速さもなかなかのものである。出火からおよそ30分後、早くもカメラマンとレポーターが現場に駆けつけていたのだ。それに比べ、「電気会社の人間」は一向に来る気配はなかった。

出火から鎮火までショーの一部始終を見届けた俺は、歩いて家に向かった。


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