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エクアドル日記(2005年2月)
2月24日(木) 曇り後晴れ
ギター弾きの男
学校帰り、いつものようにバスに乗っていると、セントロでギター弾きの白人男が乗り込んできた。見たところ服装といい風貌といいヒッピー風だ。純粋なエクアドル人という感じではない。ヨーロッパから流れてきたパフォーマー系白人だろうか?
クエンカセントロ、ベニグノ・マロ通り
クエンカセントロ、サン・ブラス教会
バスが通常走行に入ると、彼は乗客に向かって一言挨拶した後、抱えたアコギを奏で始めた。曲は、オリジナルなのかコピーなのか分からないが、「エクアドル版カントリー」または「南米フォークソング」とでも呼びたくなる雰囲気のある曲で良かった。単なるギター1本の弾き語りなんだけど、南米的なマイナー調フォルクローレではなく、フォークソングをポップにしたような進行の、バラード調なんだけど重くない、そんな曲調だった。それに加え、彼の歌声が◎だった。情感こもりすぎのクドさもなく、だがメリハリのあるヴォーカル。いつものように俺は一番後ろの席に座ってたんだけど、バスの前部、中央通路で弾き語る彼の歌に思わず聴き入ってしまった。
彼は1曲歌い終わると、「Gracias(ありがとう)」と言ってバスの乗客一人ひとりに金を嘆願しはじめた。大抵の乗客も俺と同じことを考えてたんだろう、結構金をあげる人が多い。最後、ギター弾きは一番後ろの席、俺の前までやって来た。俺は本当に金をあげかけたけどやっぱりやめた。
思えば今まで、途上国への旅行で、またエクアドルに来てからも「物乞い」に金をあげたことはない。いつも考えさせられるのだが、自分の中で「金はやらない」というルールを決めて、頑なにそれを守っている。
だが、よく考えてみると、このギター弾きはパフォーマーである。自分のパフォーマンスで金を稼いでいるのだ。つまり、この場合、何も売るものがなく、ただ単に一方的に金を乞う物乞いと違って、彼は売り物を持っているのだ。そして、その売り物は、確かに俺の心を少し動かした。後でちょっと後悔した、「なにがしかのはした金をやっても全然良かったな」と。
エクアドルでは、お菓子やアクセサリーといった、実際に値段のついた売り物を持った物売りがバスに乗り込んできて営業することが多いが、次に多いのは歌を歌う少年である。彼らの歌には俺は金を払う気には全くなれない。なぜなら、ヘタクソだからである。自分のパフォーマンスを売ろうとするからには、それなりのレベルを持って勝負するのが当たり前であろう。エクアドル民謡だかなんだか知らないが、ヘタクソな歌を1曲歌われてはいそれでお金ください、って言われても困る。もちろん音楽はスピリット(魂)だから、技術云々ではなく、何かが俺の心を動かしてくれればそれでいい。そしてそれは決して彼らに対する同情からくるものであってはならない。そう、純粋な動機でなければ意味はないのだ。
確かに、一方的に金をせびる純粋な物乞いよりは見所はあるのかもしれない。「何か自分に出来ることをやって金を稼ごう」という健気な姿勢を打ち出しているからだ。だが、パフォーマンスをやるからには中途半端じゃいけない。誰にでも出来るようなことをやってもダメなのだ。純粋な物乞いには金をあげないというルールを保っている俺にしてみれば、「そんな歌、純粋な物乞いとかわらん、もっと練習しておととい来やがれ!」ってなもんなのである。
1月・隊員総会のリハーサルにて
(キト・スイスホテル)
この、物乞いやヘタクソなパフォーマーどもに対する警戒が、今回いい仕事をしたこのギター弾きの男に金を与えさせなかった。反射が出たとも言えるだろう。反省せなアカン。
だが実はかく言う俺も、そんな大層なことを言えた義理ではない。なぜなら10年くらい前のはるか昔、友人と2人で夜中の仙台のアーケード街に出て、ヘタクソなギターをかき鳴らして2時間で2000円も稼いだことがあるのだ(笑)。当時は全く人前で演れるようなレベルではなかったのだが、折りしもちょうどストリートで演奏する奴らが多くなってきた頃でもあり、まさに若気の至り、遊び心半分の、いわば「勢い」で飛び出していった。だが、金を稼ぐための下劣な知恵は冴えていて、演奏場所選定の際に、金払いのいいオヤジや風俗嬢が多く徘徊する歓楽街周辺を選んだのである。その選択が功を奏し、あれよあれよと2000円。ボロ儲け。とは言え、自分達のあまりのレベルの低さに、それ以来二度と夜の街には出なかったのであるが。
世の中には、ダメなパフォーマンスに気前よく金を払う、そんなバカがいるのもまた事実なのである。
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