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大平原と青い空 〜アメリカを走る〜
(この旅行記は、1997年、著者がアメリカ・ミネソタ州ミネアポリスに留学していた時に書いたものです)
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ミネソタ州の西隣の州、ノースダコタ州とサウスダコタ州は、アメリカ中西部プレーリーと呼ばれる大平原に位置する。見渡す限りの平原に、地平線まで続く真っ直ぐなハイウェイが延びている、そんなところだ。走っても走っても景色は変わらない。小麦畑と牧場。牛や馬が群れをなして草を食んでいる。誰が彼らを世話しているんだろう、と不思議になるくらいに人気は
ない。ただただ大平原が続く。
(2)
ここに住む人々は、きっと我々と時間・空間感覚が違うんだろうな、そんなことを考えた。時間は緩やかに流れる。季節ごとに景色が変わるように。東京のサラリーマンとは大違いだ。そして、空間は、広い。大地は広いもの。これまた都会の感覚とは程遠い。
(3)
ミネアポリスを車で出発し一路西へ向かって10時間、景色の変わらない大平原を走りに走って日が暮れたので、サウス
ダコタ州のカドカという街でモーテルを探し始める。1件目は満室だったが、そこのおばちゃんは、「この街には14軒モーテルがあるから、きっと部屋は見つかるよ。」と言ってくれ、その通り次のところで部屋を確保できた。
(4)
腹が減ったのでモーテルのおばちゃんに、「この辺にレストランはある?」と尋ねる。教えてもらった近くのレストランで、かわいいウェイトレスに会う。突然のアジア人の出現に、彼女は興味深げなまなざしで俺を見た。日本人なんてめったに来ないんだろうな、ここは。

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2日目。サウスダコタ州にある国立公園、「バッドランズ」は、長年の土地の侵食と気候の急激な変化により出来た、奇岩が連なる。すさまじい造形美だ。その風景は、色こそ違えグランドキャニオンを彷彿とさせる。また、ラピッドシティ郊外の、マウントラッシュモア国立記念碑は、歴代4人の大統領の顔を山の壁
面に彫ったもので、誰でも一度はTV等で見たことがあるだろう。さらにワイオミング州に入り、映画「未知との遭遇」の冒頭でUFOが舞い下りたシーンに使われた、デビルズタワー国立記念碑へ。これまた自然の驚異だ。
(余談ですが、サウスダコタ州を舞台とした映画、「Badlands」(邦題:地獄の逃避行)というのがありました。テレンス・マリック監督、マーティン・シーン:イカれた若者役)

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デビルズタワーから一路モンタナ州へ向かう。バッドランズがことのほか素晴らしく、ここでかなり時間を食ってしまい、当初予定していたスケジュールが乱れた。デビルズタワーを出たのは午後8時。夕暮れの中、誰もいない山道をひたすら走り続ける。(注:緯度が高いので、夏は日が暮れるのが遅い。午後8時でも夕暮れの感じ)
(7)
ガソリンが少ない。だが周りは人っ子一人いない山の中。アメリカの田舎道を走る時は、常にガス欠に対する気配りが必要で、今まで気を付けてきたはずだった。冷や汗をかきながら走り続け、危機一髪のところ、つい
に小さな村でガソリンスタンドを発見。しかしドアには「Closed」の文字が。最悪のシナリオが頭をよぎる。しかしそのガソリンスタンドは、田舎に似合わず、カード清算で閉店後店内が無人でもガソリンを入れることが出来た。正に九死に一生。
(8)
ほっとして再び山の中を走り始める。誰も走っていない山間のワインディングロードは、剣山か養老渓谷を思い出させる(注:剣山は徳島県、養老渓谷は千葉県にあります)。ようやく午後10時頃Belle
Fourcheという小さな街に辿り着く。辺りはもう真っ暗。急いでいた私は、ここでパトカーにスピード違反で捕まってしまう。日本でもスピード違反では捕まったことないのに。後ろにパトカーに張り付かれ、ハイビームで威圧されたので、路肩に車を停める。車の中でそのままじっとしていると、後ろから強力な懐中電灯を持った警官が歩いてくる。窓を開けると、彼は懐中電灯で私の顔を照らし、「スピード違反だ。免許証と登録証を見せなさい。」この警官の歳は、20代後半から30代前半といったところ。私は動揺した。警官は私の免許証を持ってパトカーに戻り、何やら調べている。しばらくして戻ってきて、「本来なら100ドルの罰金、もし現金でその場で払えないなら刑務所に直行だ。これからは気を付けろよ。」
私は、「助かった!」と思いつつ、「I'm sorry, thank you.」というのが精一杯だった。
(9)
ワイオミング州からモンタナ州に入る。今日中に何としてもMiles Cityまで辿り着きたいところだが遠い。真っ暗なハイウェイをしばらく走って、午後11時過ぎBroadusという小さな街に着く。1件あるモーテルには、「空室」の文字が。しかしもしここで泊まると、明日は800マイル(約1280km)以上走らないとミネアポリスに帰れない。800マイルはどう考えても1日じゃきつい。さらに走り始める。
(10)
小さなハイウェイは、すれ違う車はほとんどない。街燈も何もないから真っ暗。夜中12時頃、走りながらふと空を見上げると、一面の星空。星の海。あわてて車を停めて外に出て空を見上げる。1、2等星が、3〜6等星の中に埋もれている。天の川がくっきり。さそり座が無数の星の中に紛れている。真っ暗の大平原の中、光るものは夜空の星のみ。時間は止まり、地球上に自分以外誰もいないと錯覚させるようなモンタナの星空。すべての言葉が意味を持たなくなるほどの圧倒的な宇宙。鴨川でも、オーストラリアでもこんな星空は見れなかった。真夜中、モンタナの荒野に立ち尽くす。今まで自分が見たものの中で1番と言っていいほど、素晴らしく、かつ幻想的な光景だった。
(11)
Miles Cityに着いたのは午前1時前。この街は、交通の要衝らしく、思ったよりも栄えている。レストラン、ガソリンスタンド、モーテルが数多く集まっている。これなら・・・。しかし、8件ほど回ったすべてのモーテルが満室。どういうことだ?何か今イベントでもやってるのか、この街で?仕方なく、さらにインターステート94号を東へ(ミネソタ方向へ)向かうことにした。
(12)
しばらく走ったが、街らしい街は一つもない。ようやくGlendiveという街に着いたのは、午前2時過ぎ。そこでついにBest
Westernのホテルを見つけ、フロントの人の天の声。
「空いてるよ。」
「車の中で寝る」という最悪の事態は回避された。
(13)
午前3時に就寝、翌朝10時に起きる。今日はミネアポリスまでの600マイル強を走破せねばならない。モンタナ州からノース
ダコタ州に入る。そこから再び風景は見渡す限りの大平原。ノースダコタとミネソタと州境にある、映画「ファーゴ」で有名な街・ファーゴを通り過ぎ、ミネソタ州に入ったのは午後7時頃。景色は変わり、どんどん緑が多くなってくる。一路ミネアポリスへ。
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ミネソタ州は、緑と湖が多い美しいところだ(別名「10000個の湖の州」。詳しくは、ミネソタ州のページを見てください)。日が暮れていく。ミネアポリスの摩天楼が見えてきたのは、もう夜11時。こうして今回の2泊3日の旅は終わった。総走行距離1700マイル以上(2700km以上)。
次は、「フィールド・オブ・ドリームス」と「マディソン郡の橋」の舞台、アイオワ州を始めとする、南へ。(続く)
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