HOME > THE WORLD > Latinoamerica > Ecuador > Diario > Diario2005 > 050420
エクアドル日記(2005年4月)
4月20日(水) 曇り時々晴れ一時大雨
大統領解任速報
政治危機が続くエクアドルよりお送りします。
今日の昼、ついにと言おうか突然と言おうか、大統領がその権力の座から引きずり下ろされた。先週からの嵐の反政府デモがとうとう実を結んだのである。一国の大統領ともあろう者がまさかこうも簡単に辞任に追い込まれるとは思わなかったが、キトでは今週もデモがさらに過激さを増していて、毎晩のように市民が街に繰り出して行進をしていた。警官隊との衝突で、多数の怪我人が発生し、昨日は死者も出た。そして今日、さらなる死者・負傷者を出す反政府行動の結果、ついに大統領を打倒したのである。どういう法的経過をたどって大統領が罷免されたのかいま一つ不明(国会が罷免決議をしたと思われる)だが、とにかく連日の反政府デモの末に大統領は辞任を余儀なくされたのである。いつもの事ながら、集団化した市民の、すぐに総体的制御不能に陥ってしまう群集心理の怖さを思い知らされる。何となく勢いだけで結局はやっつけた、的所感が強い。
バルに集まってテレビを見る人々
これまたテレビを見る電気科同僚講師3人
キトの大統領官邸前に集まった市民の様子を
伝えるテレビ
そんなわけで今日は昼から仕事にならなかった。SECAPに学びに来ている軍人やオヤジ達も、バルのテレビに釘付け。俺の居室でも電気科の同僚講師3人がテレビを見入っている。すべてのチャンネルでこの大統領辞任のニュースをやっている。CNNもかなり大きくこのニュースを報道している。SECAPにいた大抵のエクアドル人は、この大統領辞任を好意的に受け止めていたようであった。実際にはキト以外の街ではこの騒乱状態を肌で感じることは出来ないほど平常通りの時が流れている。
今日の午後延々と続くこのニュース、つまりはキト市内からの中継映像は、見ている方としては非常に面白かった。自分も戦場カメラマンとして戦場と化したキトで取材したかったくらいである。
まずはキト市民の一部が暴徒化して、政府の建物に火をつけたり、コンピュータを壊したり持ち逃げしたり、銃を持って発砲したりと、こういった政治的混乱時にありがちないわゆる暴動的無政府状態が発生。さらに各テレビ局は、競って大統領ルシオ・グティエレスの行方を追っていた。彼は、この解任決定前に大統領官邸から極秘裏に逃走したらしく、過去の解任された大統領と全く同じように、他国(パナマと言われている)への亡命を図った。しかし、ヘリでマリスカル・スクレ国際空港に着いたのはいいものの、何と空港の滑走路に多数の市民が無断で侵入して、彼が乗り込んだ小型飛行機の離陸を阻止したのである。エクアドル国民にしてみれば、二度と同じ轍を踏むか、という思いなのだろう。過去の事例を学習しているのである。というのは、最近も含めて今まで何人ものエクアドル大統領がその地位を追われて他国に亡命しているが、彼らは政府の金を持ち逃げしており、エクアドル人誰に聞いても、奴等のことを「泥棒」と呼んでいる。同僚達はみんな口を揃えてこう言う。
「ルシオは今政府の金を持って逃走してるんだ。」
だから市民も、必死になって奴の海外への高飛びを阻止するのである。自分達の税金を盗まれて、エクアドルが干渉不可能な外国に亡命されることは、何があっても阻止しなければならない。それにしても、こんなに面白いことってあんまりないよ。
離陸できなかった大統領は再びヘリに乗り込み、どこかへ姿をくらました。その後のニュースでは、在エクアドルブラジル大使館に保護を求めて駆け込んだようである。あれだけ今までテレビや記者会見で自分の仕事を自画自賛してきた大統領が、権力の座から滑り落ちたとたんにこの夜逃げ状態にならざるを得ないことの怖さというか滑稽さが、この国には健全な民主主義が存在しないことの証といってもいいだろう。彼が今まで言い続けてきたように自分が潔白なら胸を張って開き直ればいいと思うのだが、やはりきっと何か後ろめたいことがあるんだろうし、こういう市民の反政府蜂起によって解任されたことを考えると、一部の反大統領派市民に袋叩きにあって殺されるかもしれない、というのは前述した集団大衆心理を考えれば現実的な話である。もっとも、もし彼が本当に政府の金を持ち逃げしてたら、大統領としてたとえ今までどんなにいい仕事をしてきたとしても、そんなものはもうすべてキャンセルされて、完全な、悪質な一犯罪者になり下がるだけである。
さて、次の大統領には副大統領が自動昇格したのだが、これからもこの国の政情は予断を許さないだろう。選挙で選ばれていないこの新大統領が国民に支持される保証はないし、ルシオがいなくなった今、キトの市民は議員全員、ルシオの息のかかった政府関係者すべての辞職を要求して集結している。まだしばらくはこの混乱が続きそうな感じである。
最後に、俺的に最も注目していることを一つ。以前書いたように、俺が勤める職業訓練校SECAPの現校長は、ルシオ・グティエレスの知り合いだということでその地位を得たオバちゃんである。彼女は今日学校を休んでキトへ行っていた。おそらくこの危機に少しでも大統領派の力を結集しようということで呼ばれたのか、自分から進んで出向いたのであろう。もちろん仕事を休んで、である。まぁ確かに彼女にしてみれば、大統領が倒れれば自分の地位も消えてなくなるから今は気が気じゃないだろう。だが彼女の思いもむなしく、大統領はあえなく轟沈。さてさて、彼女がこれからどうするつもりか知らないが、SECAPの次なる人事が見物である。彼女は、どの面下げて学校に来れるのであろうか。SECAPのすべての職員が、彼女が校長になった経緯、つまりは彼女こそが汚職の象徴であることを知っているから、ひょっとしたらもう彼女はSECAPに戻ってこないかもしれない。ルシオの逃亡のように。
>次の日の日記へ
HOME > THE WORLD > Latinoamerica > Ecuador > Diario > Diario2005 > 050420