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カンボジア旅行記
2003年6月・記
(3)アンコール・ワットとの対面


翌5月26日。朝10時ごろまでゆっくり寝ていた私は、11時頃にゲストハウスの1階に下りていった。外にあるレストランで朝飯を頼んだ。外はすでに30度を超える暑さだ。天気はメチャメチャいい。
(さてと、いよいよ今日はアンコールワットやな。どうやって行くか・・・。)
と、ゲストハウス関係のバイクタクシー運転手と思われる男が、私が一人で朝食を食べているところにやって来た。彼は、私の対面に座り、ニコニコしながら話しかけてきた。
「やあ。どこから来たんだ?」
「日本だ。」
「今日はこれからアンコールワットに行くのか?」
「ああ、そのつもりだ。」
食べ終わり、アイスティーを飲みながら答えた。
「じゃぁ、バイクで僕が連れて行くよ。1日チャーター6ドルだ。アンコールワット、アンコールトム、郊外にもいい遺跡がたくさんあるよ。ガイドブック見せてみ。」
奴は私の『地球の歩き方』を手にとって、遺跡群の写真を指差しながらここはお薦めだと矢継ぎ早に言ってきた。それにしてもここに旅に来る日本人のほとんどが『地球の歩き方』を持っていることをうかがい知ることができる。何せ奴は『地球の歩き方』のどこにどんな写真が掲載されているかをよーく知っているのだ。

彼の名はソピア。歳は20代中盤〜後半だろうか。悪い奴じゃなさそうだ。カンボジア個人旅行でのアンコールワット観光は、1日バイクチャーターが最も一般的だ。そして1日6ドルは、昨日のタクシーの運ちゃんと同じ値段。どうやら相場ジャストのようである。

「よし、じゃあ連れてってもらうか。」
私は同意し、しばらく彼と話していたが、アイスティーも飲み終わり、彼のバイクの後ろにまたがった。バイクは、ホンダのゲンチャリである。シートが長くなっていて、2人が座れるようになっている。

シェムリアップの街を出るとすぐに林の中の1本道となる。そこを10分くらい走ると、視界が開け、いよいよアンコールワットだ。アンコールの周りには堀が掘られている。青い水をたたえた堀の内側は森林である。青と緑のコントラスト。堀の外側を走る道を正面入り口へ向かう。そこからすでに深い木々の梢の間にアンコールの尖塔が見え隠れしている。高まる興奮を胸に、正面入り口に着いた。そこでソピアと別れ、2時間半後の午後3時に向かいの喫茶で待ち合わせた。2時間半、フリーでアンコールワットを観光するわけである。堀の上に通された道(西参道)を歩いて西塔門へ向かう。そこから中を見ると、そこにはアンコールワットが150mくらい先に輝いている。

高揚感とともに入り口から写真を撮っていると、突然カメラが異音を発した。その後、カメラのレンズがズーム位置で止まったまま、カメラはうんともすんとも言わなくなってしまった。
「マジかよ〜!?」
アンコールワットまで来てカメラなしでいられるはずがない。一之瀬泰造ではないが、アンコールワットをカメラに収めるためにここまで来たのである。このまま中に入るわけにはいかなかった。それにしても初日にいきなりカメラが故障。このカメラは、5年ほど前にアメリカで購入した富士フィルムのコンパクトカメラで、結構いい発色をするので気に入っていたカメラだ。

(まずは近くにカメラ屋がないか探してみるか。)

すぐに物売りの子供達に囲まれる。彼らに聞いてみる。
「この近くにカメラ屋さんある?」
「あるよ!」
彼らが言っているのは、使い捨てカメラを売っているそこらじゅうにある出店のことだった。アンコールの周りは観光地だけあってジュースとか使い捨てカメラ・フィルムを売っている店は多いが、普通のカメラ店などない。
「いやぁー、使い捨てカメラじゃなくてさー。どうすっか?」
そこで、ソピアとの待ち合わせの喫茶に入って、店のお姉さんにソピアの連絡先を知らないか聞いてみた。すると、すぐに彼女はソピアに電話をかけてくれた。
しばらくしてソピアがバイクで現れた。彼は、昼飯を食うためにシェムリアップに戻っていたのだが、私が呼んでると聞いて駆けつけてくれたのだ。いい奴だ。
「アンコールの入り口でカメラが壊れちゃってさ、修理したいんだけど。」
「じゃぁ、シェムリアップの街に戻ろう。いくつかカメラ屋あるよ。」

こうして炎天下の中、ソピアとカメラ屋へ行ったが、2件目で、修理できないことが判明した。レンズをズームさせる機構部品が破損してしまっていて、ここではその部品を調達できない、というのである。(マジかよ〜)

しばらく考えた。まだ旅行1日目なのである。このカンボジア・ネパールの旅11日間が全くカメラに撮れないのはあまりに痛すぎる。苦渋の決断で、新しいカメラを買うことにした。がいつものように現金の持ち合わせは少ない。日本円にして5万円で11日間の旅に出てきたのだ。しかもカンボジアではカードの使える店は少ない。カメラ屋で、デジカメを始めとする高いカメラを色々薦められたが(ソニーのU10とか)、結局79ドルのオリンパスのコンパクトカメラを買った。なけなしの現金だ。ベトナム旅行、インド旅行に続き、旅行実質1日目にアクシデントに見舞われた。

気を取り直してアンコールワットに戻った。すでに時計は2時になっていた。
「今日はアンコールだけだな。」
そう言ってソピアと別れ、アンコールワットに入った。

改めて、アンコールワットとの対面。
石の芸術。ジャングルの中に忽然と存在する王国の遺構。昔人が住んでいたんだなぁという感じが全くしない無機質な、古いんだけども人の手垢のついていない雰囲気の不思議な建物だ。

独特の形をした尖塔に登る階段は、階段と言うよりも段差といったほうがいいような、人が登るために作られたとはとても思えない急なものだ。そこを上ってみる。恐ろしく急な階段だ。建物を上がると、周りが眺望でき、このアンコールワットが深い森林に囲まれた場所に建っていることが分かる。

そして、建物の周りを取り囲む回廊の壁に延々と彫り込まれたレリーフは、恐ろしく精緻なものだ。ヒンズー教の叙事詩「ラーマーヤナ」の物語を描いたものや、歴史上の戦いを描いたもの、それを一つ一つ見るだけで時間を忘れる。

今日は一日アンコールワットに浸った。それにしても日中35℃もある野外での活動はキツイ。特に午後は最悪状況だ。熱帯雨林の高温多湿。不快指数全開。そして今日一日で一気に焼けた。

アンコールワット遺跡の周りの物売りの子供たちのしつこさには手を焼く。彼らは絵葉書などお土産を手に手に持って近くの土産物屋から派遣され、高い機動力で遺跡の周りを移動し、観光客という観光客に声をかけていく。白人、日本人お構いなし。バリ島で見た子供物売りが醸し出していた物悲しい雰囲気は感じられない。バリ島の子供物売りは、子供ならではの純真さのままで物を売ることを強制されているようで、押しも何もなくただはにかみながら小声で「絵葉書買って」と我々のズボンを引っ張って嘆願し、こちらの方が悲しくなり、「こんないたいけな子供に物売りなんかさせやがって」と憤ったものだ。当然親たちは自分たちより子供の哀愁悲惨を利用したほうが観光客の慈悲の心に訴えて儲けが上がるだろうと考えてのことだろう。子供たちはその純粋さを利用されているのだ。対照的にここアンコールの子供たちは、活発だがもうスレてしまって、観光客相手にすでに大人が展開するような商売の狡猾さを持っているように思える。だが、この稼ぎを家族の生計の足しにしていかなければならないのだろうと考えると、一方的に批判することもできない。ただ私が望むのは、騙しや詐欺まがいのことだけはしないで、ボッタクリくらいで止まっとけよ、ということだ。

アンコールワット写真集

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