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ボリビア旅行記
2004年9月・記
(9)帰途へ、終わらない旅

ボリビア旅行最終日、9月3日金曜日。今日はラパスから2本の飛行機を乗り継いでグアヤキルへ戻り、さらにバスでクエンカへ帰るだけ。グアヤキル到着は午後1時半予定だから、クエンカには午後6時頃には着くだろう。
ラパス→リマはボリビアーノ航空、リマ→グアヤキルはタカ航空の飛行機だ。

普通なら、順調に乗り継いで無事クエンカに着きましたチャンチャン、で終わってこのページにはほとんど書くことはないのだが、トラブル続きのこの旅を象徴するかのように、こんなに易しい帰路は、簡単には終わらなかった。

午前7時。リマ便の2時間前。もう僕はラパスのエル・アルト国際空港にいた。何しろボリビアーノ航空は、1時間半も離陸が早まってしまうような航空会社である。
チェックインカウンターには見慣れたおじさん。
「今日のリマ行きは時間通りだろうね?」
ちょっとした皮肉をぶつける。
「残念ながら30分遅れだ。最終目的地はどこだい?」
「グアヤキル。リマで乗換えだよ。」
とここまできて、またおじさんは考え込んでしまった。じっと僕の航空券を見つめている。そしてこう言った。
「このチケットは、リマでの乗り換え時間が1時間しかない。ちょっとグアヤキル行きに乗り換えるのは無理だな。」
「へ?」
確かに、僕の持ってるチケットは、リマでの乗り換え時間は1時間ちょうど。ボリビアーノ航空が30分遅れたおかげで、タカ航空のリマ−グアヤキル便への乗換えが間に合わない、というのである。
「いや、だけどこれは旅行会社が取ってくれたチケットだからさ、そんなこと聞いてないし。」
「だけど、通常国際線乗り換えの場合はトランジットに最低2時間は取らないとダメなんですよ。だから、このチケットでは我々どもは保障できないわけです。」
「じゃぁどうすりゃいいんだよ?」

今日このリマ便を逃すと、明日の同じ便ということになるが、明日土曜日はタカのリマ→グアヤキル便が飛んでいない、という。同じルートでこの航空券を生かすには、月曜まで3日も待たないといけない、というではないか。そんなに待てるはずがない。月曜から仕事である。
でタカ航空のオフィスに行ってみろ、と言う。リマからはタカ航空がキト行きも飛ばしているので、明日のキト便に乗り換えられるかもしれない、というのだ。ラパス空港のタカのオフィスは、今日はラパス発着のタカ便がないのであいにく閉まっていて、セントロにあるタカのオフィスまで行かないといけないらしい。セントロまではタクシーで45Bs(約5.6ドル)かかる。
「セントロまでのタクシー代は出る?」
「申し訳ありませんが、これはチケットの問題ですので、出ません。」
「もし今日ラパスに泊まることにした場合、ホテル代は出るの?」
「残念ながらそれも出ません。」

僕は怒り心頭に達した。要は何も補填してくれない、と言うことである。リマまでの便は変更できるが、その他ホテル代、セントロまでの交通費等は何も出さない、というのだ。チケットの乗り換え時間が少ないせいだと?お前らが30分遅れたおかげで乗継ぎ出来ないんじゃねぇかよ?

1週間前と同じように、僕は再びラパス空港の椅子に座って途方に暮れることになった。リマ行きは30分遅れで9時半発。リマで飛行機を降りて乗り継ぎの出発ロビーまで行く時間を考えると、乗り換えに30分もない状況では確かに乗り継ぐのは難しいだろう。それじゃここラパスに留まるか?だが明日はリマからのグアヤキル便はない。おそらくタカもこの航空券の不備を主張して、タダでキト便に乗り換えさせてくるとも思えない。それなら明日まで待つ意味もない。どうせ金を払うなら、今日中に帰る道を探った方がいい。

出発時間ギリギリ、僕は今日のこの遅れたリマ行きに乗ることを決断した。そうだ、ひょっとしたらタカ航空も少し遅れているかもしれない、などという淡い期待も抱きながら。
検札をしていた例のボリビアーノ航空のおっちゃんは、改めて僕に忠告する。
「乗り換えはまず無理ですよ。それでもいいんですか?」
「君達が何もしてくれないからね。」
捨てゼリフを吐き、リマ行きの飛行機に乗り込んだ。
(さて、リマでどうするか、それが問題だ。)

リマ行きの飛行機の中、リマでどういう可能性があるのかを、ずっと考えていた。
実は僕にはもう一つ、重大な足かせがあった。今外務省ではペルーへの渡航に対して注意喚起を促していて、公用パスポートを持つ僕ら協力隊員は、ペルーに渡航することはできない。ただ、リマ空港は南米各国へのゲートウェイなので、トランジットで空港に10時間以内の滞在なら出来る、というルールがあった。
つまり、僕はリマ空港で夜を明かすことは出来ないのである。ただ、このリマ行きの飛行機に乗った時点で、最悪リマ空港で夜を明かすことも視野には入っていた。飛行機が遅れたための言わば緊急措置として、である。そういう特殊な状況ならやむを得ない、とJICA関係者も理解してくれるはずである、との読みがあった。

飛行機は1時間45分でリマに到着。大急ぎでグアヤキル行きタカ航空の出発ゲートに走るが、時既に遅し、出発ロビーに乗客はもう誰もいない。タカの係員に咳き込んで尋ねると、やはりグアヤキル行きのタカ航空機はもう飛び立ってしまった後だった。ボリビアーノ航空とタカ航空はやはり違う。タカは常にキッチリと時間通りだ。
(さぁ、どうする?)
まずはタカ航空の係員に相談してみる。すると、ボリビアーノ航空の遅れが原因だから、ボリビアーノ航空が何とかしてくれるはずだ、との回答。ボリビアーノ航空のカウンターでは、他に3人の乗客が係員に迫っていた。どうやら彼らも同じ飛行機の遅れが原因で乗り継げなかったようだ。
ボリビアーノ航空の係員は、30代前半と見える長身の男性。彼は色々走り回って可能性を探ってくれたが、結局僕が乗ろうとしていたタカ航空のグアヤキル行きは明日は飛んでいないため、今日帰るのなら別料金を払ってキト行きに乗るしかないらしい。タカ航空のキト行きももう行ってしまった後だったので、これに乗るのも明日まで待つしかない(これに無料で振り替えてくれるのかどうかは聞かなかった)。ただ、いくら飛行機が遅れたためとはいえ、リマの空港で一晩を明かすのは前述したルールがある以上、心苦しい。

思案の挙句、ボリビアーノ航空のニーちゃんが提示した案、金を払ってラン・ペルー航空のキト行きに乗ることに決めた。だが、ラン・ペルーのカウンターに行くと、係員の女性の冷たい答え。

リマ、ホルヘ・チャベス国際空港

「もう出発1時間前を切っているので、チケットは買えません。」
時計を見ると12時20分。この飛行機は午後1時発だ。
ボリビアーノ航空のニーちゃんが猛抗議する。
「そんなバカな。席は余ってんでしょ、売ってくれよ。」
「ルールはルールです。ダメなものはダメです。」
「うぅっ・・・。」

結局この日キトへ行く最後の飛行機が飛び立っていくのを、指をくわえて見ているしかなかった。エクアドルが遠い。
僕が愕然としていると、ボリビアーノ航空のニーちゃんはまたせわしなく動き始めた。
「ここで待っててください。」

僕と同じように乗り継げなかった客のうち、キトへ戻るエクアドル人のおじさんとボゴタ(コロンビア)へ戻る若い女性は、今日はペルーに入国してリマで1泊し、明日の便に乗ることに決めたらしい。たが、中米ニカラグアのマナグア(ニカラグアの首都)へ帰るというカウボーイハットのおじさんは、僕と同じようにペルーの入国審査を通って入国することが出来ない、という。
「ニカラグア人がペルーに入るのはビザがいるんだよ。俺はビザ持ってないから入国は出来ないんだ。ここ(出発ロビー)で夜を明かすしかないかもしれない・・・。」
「僕も同じですよ。事情があってペルー入国は出来ないんです。ここで寝るしかないかも。」

思えば、空港で夜を明かしたことは今までに一度しかない。タイはバンコク、ムンバイ国際空港。昼間は世界各国の旅行客でごった返し、免税店が数百m延々と通路に連なる巨大な空港だ。夜はさすがに店は閉まってしまうが、夜を明かす旅行者が多いのだろう、カプセルホテルのような簡易宿泊施設もある。僕が泊まった夜はそのカプセルホテルは満室だったので、空港の椅子に横になって寝た。ただその時「空港で寝る」ってのは予定の行動で、飛行機に乗れなかったからやむを得ず、というのではなかった。

ボリビアーノ航空の彼は、20分位して戻ってきた。
「セニョール・ヨシダ。今日中に帰る唯一の方法は、コパ航空を使って、まずパナマシティに飛び、その後グアヤキル行きに乗る、これしかないです。運賃は280ドル。どうしますか?」

280ドルか・・・。僕がこの12日間のボリビア旅行で使った金は、ベラボーに高い空港使用税(ラパスもグアヤキルも25ドル)とかお土産代とかも全部合わせて約290ドル。これとほぼ同じだけの金額。現金は持ってないが、クレジットカードがあるので払える。
もし今日ここで夜を明かすとしたら、明日のキト行きの飛行機に乗ることになるだろう(ここからグアヤキルへ飛ぶ飛行機は明日はない)。そしてキトからバスで10時間かけてクエンカへ帰るのはあまりにもツライ。とすると飛行機。その金額を考えると、280ドルはかからないにせよ、まぁ結構な出費になる。つまり、ちょっと多く払って今日中に帰るか、それともタバコも吸えないこの出発ロビーであと20時間くらい退屈で寂しい夜を過ごして明日帰るか。
僕はコパエアーの飛行機に乗ることに決めた。ボリビアーノ航空のニーちゃんにその旨を告げ、クレジットカードで支払う。もしカードを持ってなかったら、有無を言わさず今日はこのリマ空港の椅子で寝ていたことになる。
それにしても恐ろしく遠回りの帰途だ。リマからグアヤキルまで直接飛べば約2時間。パナマシティ経由でグアヤキルへ戻ると、乗り換え時間も含めておよそ6時間半。
カーボウイハットのニカラグアのオッちゃんも、どうやら僕と同じこのコパエアーの飛行機に乗ることにしたらしい。ニカラグアへ帰るのなら、パナマはちょうどいい経由地だ。

午後2時55分発パナマシティ行きコパエアーはリマ空港を飛び立った。北上する飛行機は、程なくしてエクアドル上空を通り過ぎる。パラシュートでもつけて飛び降りたい気分になるが死にたくはない。
機内映画はハリーポッター。つまらなかったが何もすることがないから見る。
パナマシティに到着。蒸し暑い。熱帯の中米だ。思えば初めてエクアドルに来る時に経由したのがここパナマシティだ。待合ロビーの光景を見て、去年の12月にここに来たときのことをまざまざと思い出す。そういえばあの時は危うく僕のバックパックがパナマで路頭に迷うとこだったんだ。
1時間ほど待ってグアヤキル行きが離陸。

グアヤキル到着は午後9時半。当初の予定から8時間遅れ。テルミナルからバスに乗り、クエンカに着いたのが午前3時。
今回の旅は、最後の最後まで目的地到着が深夜だった。


(終わり)

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(ボリビア旅行記−9)
                                             
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