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インド旅行記
2003年1月・記
第2部 日常に死を見る聖地・ヴァラナシ
ガンガー、ガート、迷路
DAY4-1(2003/1/1)

元旦の朝。6時頃、ホテルを出て、ヴァラナシの街の中心にある交差点、ゴードウリヤーへ向けて歩き始めた。雨は上がっている。日の出は7時くらい。まだ外は真っ暗である。寒い。街灯が少なく、暗い道を歩く。酔っ払っていると思われる怪しいサイクルリクシャのオヤジが声をかけてくる。
「ハッピーニューイヤー!どこ行くんだ?お前は今年最初の俺の客だ、乗れよ。」
「いや、歩くからいいよ。」
オヤジはしばらくしつこく私の後ろをついてきたが、しばらくして諦めた。
ゴードウリヤーに近づくと、朝早くだというのにチャイ屋が開いていた。道端にいすやコンロを置いて、年配のおじさんが熱いチャイを沸かしている。私は「ナマステ〜、ハッピーニューイヤー、寒いね〜!」と言ってチャイを
頼んだ。寒い朝に、熱くて甘いミルクティーは最高だ。(右写真)
夜明け前のゴードウリヤーに人影はまばらだ。だが、河に近づくにつれ、道はどんどん混雑してくる。空は白んで、もうすぐ夜明けであることを感じさせる。さらにガンジス川へと向かって歩く。
(いよいよ聖なるガンガーとのご対面や!)
朝もやの中、私の前に雄大な流れが姿を現した。
(これがガンガーか・・・・・・・・・・・。)
空は曇り空。ガンジス川の対岸、東の方角も、雲が低く垂れ込めている。もう日の出の時刻だ。この調子では初日の出の太陽は拝めそうにない。
がっかりしながらダシャシュワメード・ガート(注1)の階段に座ってガンジス川を眺めていると、早速若者3人組が声をかけてきた。
「こんにちは。」

ダシャシュワメード・ガート |

朝のガンガーとガート |
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物売りのおじさん |
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彼らのうちの一人は、日本語を話した。彼は以前、日本映画「深夜特急」に出演し、主演の大沢たかおと親交もあるそうである。
(またホラ吹きやがって・・・。)
と胡散臭さを感じたが、よくよく話を聞くと、どうやら本当のようである。奴は「ガンガラム・シルクショップ」というお土産屋でインドシルク製品を売っているのだそうだ。だが、奴は私に店に来ることを強要するでもなく、「気が向いたら来てくれ」と言って去っていった。
それからすぐにマッサージオヤジに捕まった。彼らは、「マッサージしてやる」と言って観光客を座らせ、マッサージをして金をもらっている人々である。ここヴァラナシの名物である。その強引さは、バリ島のビーチに出没する「マッサージおばさん」に引けをとらない。朝っぱらからマッサージもねぇやろうと、「ノー・サンキュー」を繰り返したのだが本当にしつこい。やっとのことで振り切って、ガンジス川沿いに南に歩き始めた。様々なガートを見ながら散歩した。寒いからか、ほとんど沐浴している人はいない。「ガンジス川は、日の出の頃が一番賑やか」というイメージがあったので、拍子抜けした。私もあわよくば沐浴、と思っていたが、インドに発つ前に会社の先輩から受けた「ガンジス川で沐浴すると、感染症にかかるからやめといた方がいい」という忠告をマジメに守り、というか寒すぎて水に浸かる気すら起こらなかった。
河には無数のボートが浮かんでいる。日本人年配団体観光客のボート、白装束の集団を乗せたボート(河に遺灰を流している遺族だろうか)。私も船頭と値段交渉をして、ダシャシュワメード・ガート付近からボートに乗って河に漕ぎ出した。よく見ると、岸近くに子ヤギの死体が浮かんでいる。ここでは死んだ動物もどんどん流れていく。そして人間でも子供は火葬せずにそのまま流すのだという。船は川の流れに乗って下流に向かう。河から岸を眺めると、ガートが延々と続いている様子が見て取れる。各ガートは、インド各地の様々なヒンズー神を祭っているそうである。
途中、小さな火葬ガートを河上から撮影していると、そこにいた子供達がいきり立った。
「ノー、フォト!!」
そして5,6人の子供達が一斉に私の乗ったボートに石を投げつけて攻撃してきた。私はびっくりしてすぐに撮影をやめた。
ボートは、人影の少ないガートまで下流に流れ、その後船首を転じて上流へ戻る。ダシャシュワメード・ガートをちょっと通り過ぎたところでボートトリップ終了。
そうこうして朝9時ごろ。「ムケ」と名乗る青年が声をかけてきた。見たところインド人にしてはなかなかおしゃれな服装をした若者である(左下写真に写っているのが奴)。彼は日本語、しかも関西弁が堪能で、以前日本の漫画や映画に出たこともある、という(注2)。彼も「ガンガラム・シルクショップ」の名を出していたので、どうやらさっきの「大沢たかおの知り合い」を称する若者と仲間らしい。

ヴァラナシの迷宮とムケ(右) |
「火葬場には行きましたか?」
「いや、まだだけど・・・。」
「じゃぁ、僕が案内してあげますよ。」
(こいつ、関西弁で楽しそうな奴やんけ。)と思い、私は奴としばらく行動を共にすることとした。
奴に連れられて、ヴァラナシの裏小路を歩く。ここは、ガンガー沿いに並ぶ各ガートの裏側に作られた不思議空間だ。迷路。この迷路は、各ガートをつなぐ役割もしている。
人が二人すれ違うのが精一杯の細い道を、大阪弁インド人とくねくね歩く。右に曲がって階段を登り、左に曲がって階段を下りる。すぐに全く自分がどこにいるのか分からなくなる。だけど裏路地には牛もたくさんいるし、人々もせわしなく歩いている。
裏路地の不思議な迷宮感が、私に否応なく写真を撮らせる。時間をかけて私が写真をバシャバシャ撮っているのを、大阪弁インド人ムケは文句も言わずに待っていてくれている。
狭い路地の両側には、いろいろなものがある。店があり、普通家がある。ところどころにリンガ(男根形の石、シヴァ神のシンボル)があり、通りかかる人々が立ち止まっては祈っている。そしてヴィシュヌの壁画がある。極彩色の看板がケバケバしく、横断幕のようなものもかかっている。狭い路地を塞ぐように牛がいる。神聖な動物である彼らは、悠々自適のように見える。どんなインド人も、牛を邪険に扱う者はいない。
ヴァラナシ ガート裏路地の風景
妙な高揚感とともに20分ほど迷路を迷い続けた後、突然前が開け、ガートに出た。そこが、「火葬場」マニカルニカーガートだった。
(注1)「ガート」とは、階段状の斜面になってガンジス川に没している堤のことで、ここヴァラナシでは、ガンジス川西岸に60ものガートが延々と並んでいる。それぞれのガートでは、それぞれの地域のそれぞれの神が祀られている。ここで人々は沐浴する。
「ダシャーシュワメード・ガート」は、ヴァラナシの中心的ガートで、常に多くの人で賑わっている。
(注2)この後彼の店「ガンガラム・シルクショップ」に行き、その漫画を実際に見せてもらった。小学館の「インドまで行ってきた!」(堀田あきお&かよ著)というバックパッカーコミックで、本当に「ムケ」が登場していたが、あまり顔が似ていなかったので、奴と同一人物とは限らない(笑)。映画は、「深い河」(遠藤周作原作、熊井啓監督、奥田瑛二、秋吉久美子主演)だという。だが、奴らしき人物は、出てこなかった。まぁきっと画面の片隅に写るエキストラだったんだろう。
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