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インド旅行記
2003年1月・記
エピローグ

インドでは、日本で自分が育ってきた環境の中で習得してきた常識は通用しない。自分の価値観が、これでもか、というくらいに覆される。インドでは、自分のちっぽけなプライドや日本での常識を捨て去らないと、とても心穏やかにはいられない。もしプライドとか日本での常識にこだわれば、あっという間にインドを大嫌いになってしまうだろう。インド人は、誰も日本の常識通りには動いていない。そう、川の流れのようにインドの空気に身を任せねばならないのである。

「発展途上国」と呼ばれるところに旅行すると必ず経験するのだが、我々から金をボッタクろうとする人々と、どう付き合っていくか。これはいつも私を悩ませる。インドでは、他の途上国と比べても物の値段が安い。国全体が極端に貧しいのである。ここ10年くらいで、インドルピーの価値は、下降の一途のようだ。よって、例えば100円が彼らにとってはとてつもない価値を持つことになる。僕等が「はした金」と思っている金が、彼らにとっては大金なのである。100円あれば、間違いなく腹一杯食えるのである。それを知れば、彼らが我々から金を巻き上げようとするのは、ごく自然なことである。あまりにも金銭感覚が違うのである。もし逆の立場、つまり私がインド人商人だったら、「簡単に大金を稼ぐ方法」として、日本人から金をボッタくるのは甘くてオイシイ選択肢だと、きっと考えるだろう。実際にやるかどうかは別として。

あまりに値段交渉を厳しくやっていると疲れる。疲れるので、「まぁ、ちょっとくらいはいい目を見させてやるか」と考えることも何度かあった。しかし、「これくらいなら安いし、まっいいか。」と考えて払うお金が、実は彼らにとっては全然大金であり、それに味をしめるとやめられなくなってしまうのである。そうやって、「日本円で考えれば安いからいいや」と安易に払う行為が、彼らの犯罪行為を助長させ、長い目で見るとインドに旅行する日本人観光客が永遠と嫌な目に遭い続けるのだ。それを考えると、しっかりと彼らと向き合っていかねば、という気になる。(もちろん、感謝に値するサービスを受けたら、チップをはずむことは全然いいと思う。)

それにしても、このような圧倒的な経済力の差が、世界中に不幸をもたらしている。それは、実際の犯罪や戦争といった形で現れるのだが、何と言ってもその前段階として人の心がすさんでしまうのがマズい。「奴らはとてつもない金持ちだ、非合法的な方法でその金の一部を奪っても、文句はねぇだろう。俺達はこんなに貧乏で苦しんでるんだ、」と。

宗教の違い、民族の違い等、人間同士の紛争の主たる原因があるが、何と言っても一番身近で一番起こりがちなのが経済力の差、貧富の差である。

インド社会全体の貧しさと共に、カースト制度のもたらす悪影響も随所に垣間見えた。とにかくインドには「物乞い」が多い。街中にいる。商店街はもとより、駅、電車の中、道端・・・。どこに行っても物乞いだ。中には体全体を汚いボロ毛布で覆い、じっと動かないため生きているんだか死んでいるんだか分からない人も多い。

少数の金持ちと大多数の貧乏人。今なお爆発的に急増する人口。インドの貧乏人が(僕等が思っているところの)普通に暮らせる日が将来来るのであろうか。

(終わり)

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【インド旅行記 1011−エピローグ (番外編:インド列車)


                                           
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